Q:「SUITS/スーツ」はどんなドラマですか?
ガブリエル・マクトとパトリック・J・アダムス、素晴らしい2人の俳優が演じるバディ・ドラマだ。リーガルものでもあるが、舞台は裁判所ではなく、法廷劇が描かれるわけでもない。このドラマの舞台は法律事務所で、テーマは、成功をつかむこと、だ。
そして、事件の解決よりも断然キャラクターにフォーカスを当てている。ニューヨークの大手法律事務所で働くことになった青年マイクと、彼の上司であり師でもあるハーヴィー。演じるパトリックとガブリエルは本当に相性がいいんだ。撮影現場にいるとその良さがよくわかるね。『スウィンガーズ』の撮影中にヴィンス・ヴォーンとジョン・ファヴローの相性の良さがわかったように、そして、『Mr.&Mrs.スミス』の撮影中にブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーの相性の良さがハッキリとわかったようにね。
Q:ドラマのアイデアは、どこから思いついたのでしょう?
私の父は、ニューヨークで非常に力のある法律事務所を経営していたんだ。私はこのドラマのような法律事務所を身近に感じて育った。父は14年前に亡くなったが、現在は兄弟が法律事務所で働いている。親戚にも弁護士が多い。だから、このドラマはかなりリアルだ。多くが、私が家族の中で成長する過程で個人的に目撃したことに基づいているからね。そして、個人的な経験も活かされた。10年前、私はロー・スクールに行ってもいないのに、弁護士試験に受かるか否か試してみようと思った時があったんだよ。
Q:キャラクター作りについて教えて下さい。
我々は、まず最初に脚本を書いた。そして、有能な弁護士であるハーヴィー・スペクターと、落ちこぼれだが賢く、非常に世慣れた若者マイクという2人のキャラクターを創り出した。特に私は、マイクの設定が気に入ってね。どうやら自分が、頭脳が武器というスーパーヒーローに凝っていることに気づいたんだよ。ジェイソン・ボーン(映画『ボーン』シリーズの主人公)も頭脳を武器にしていただろう?
マイク・ロスの武器は記憶力だ。物事を鮮明に記憶できて、一度読んだものは二度と忘れない。彼のそんな設定が決まった後、我々は、頭脳対決をするもうひとりのキャラクターを生み出すというアイデアを思いついた。ふたりは常に一番だ。だが多くの点で全く違うし、多くの点でよく似ている。年上のハーヴィーは、ハーバード大を卒業し正規のルートで正しく出世してきたタイプ。だが自分本位な本来の気質から、全てに対して独自のやり方を貫き通す。そして、彼がバックアップする青年マイクは、それこそ何でも自分流でこなす男。大学を卒業してもいないんだ。
Q:キャスティングの決め手は?
ハーヴィーが高慢になればなるほど、なぜか彼を好きになってしまう。そんなキャラクターを演じる俳優の、スターとしての独特の資質が、このドラマの成功には不可欠だっだ。ガブリエル・マクトには明らかにそんなカリスマ性があり、高慢な雰囲気を出すことができる。そして、人好きのするタイプだ。
私は、キャラクターの持つ“人を寄せつけない要素”を重要視している。ジェイソン・ボーン役にどうしてもマット・デイモンを起用したかったのは、彼ならジェイソン・ボーンの暗い過去を背負うことができ、同時に観る者の共感を得ると思ったからだ。「SUITS/スーツ」のハーヴィー・スペクターにもそんな俳優が必要だった。彼の高慢さや自信過剰さを受け入れつつ、視聴者には彼を好きになってほしかった。視聴者が彼を嫌うかもしれないなんてことは、これっぽっちも心配したくなかったんだ。
マイク・ロスのキャラクターについても同様だ。頭が非常にいいキャラクターだと視聴者に嫌われる可能性がある。おまけにマイクは、みんなが守るルールを一切守らないような男。それなのに、マイクは、ハーヴィーとは違う感じで視聴者に好かている。それは、彼が、非常に賢い男であると同時に非常に愚かでもあるからだ。彼の賢い部分に皆は惹かれるが、一方で、その純朴な面を見ると、賢いから大丈夫と思いながらも彼を助けたくなるんだ。この2人の役にピッタリの俳優を見つけられた時のみ、このドラマは成立すると、私にはわかっていたね。
Q:ハーヴィーとマイクのキャラクターをひとことでいうと?
2人とも“アンチヒーロー”だ。アンチヒーローは、私が携わる企画によく出てくる大好きなキャラクターで、私の映画やドラマを見れば分かるはずだが、主人公はほぼみんな“英雄”という資質に欠けている。『スウィンガーズ』のヴィンス・ヴォーンの役どころは女嫌いだったし『ボーン・アイデンティティー』のジェイソン・ボーンは暗殺者で殺人犯だ。『Mr.&Mrs.スミス』の2人も、英雄という言葉には程遠い。そんな私のために、脚本家のアーロンは、このドラマ1本に2人のアンチヒーローを登場させてくれた。
2人のアンチヒーローが私の作品に出てくるのは『Mr.& Mrs.スミス』以来だ。私としては、これから2人を探索していくのが非常に楽しみだね。